日本の根幹の問題『改憲』について
理想の政治とは
清水 安倍政権の手口は、数の力で悪法を強行します。あきらめさせるためです。そして次から次へと悪法を強行して国民の目先を変え、忘れさせようとします。さらに言えば、安倍政権を批判する人たちと自分たちの支持者を分断させます。だからこそ、国民は決してあきらめない、忘れない、団結するという視点が大事なんだと思うんです。野党がバラバラでは勝てません。立憲主義を取り戻すためには、野党は政策的な違いがあったとしても、それを乗り越えて共闘しないと。
適菜 二〇一七年の衆院選では野党候補の一本化のために、日本共産党は八三選挙区で候補者を擁立しない方針を決めた。結局、野党共闘に真剣だったのは共産党だけでしたね。安保法制騒動のときは、安倍のやってることはクーデターだと言っていた東大の憲法学者もいました。
清水 クーデターですよ。
適菜 だとしたらですね、錦の御旗をかかげて、安倍一味を討伐するというのはどうですか。
清水 暴力的に。賊を討てと。
適菜 あえて、言っているんですけどね。それでもクーデターを阻止する側に、国家としての正統性はあります。
清水 選挙前に希望の党とまるごと合流した、当時民進党の代表だった前原誠司氏みたいな人間と一緒にやっていけるのかはわからないし、京都の知事選挙も、立憲民主党が本気を出してたら、変わっていた。沖縄選挙でも枝野氏が「イデオロギーにはまりすぎず、アイデンティティの範囲で応援する」って。わけがわからない。米軍基地をどうするのかという単純な話でしょう。それを最初から逃げ道をつくるようなことを言う。でも、僕たち日本共産党は、踏み切った。清水の舞台から飛び降りたか、飛び上がったかしらんけど、怖いものはないんですよ。ウエルカムですよ。ブレたとか、変節したと批判されますが、ブレないからこそ、できるんですよ。
適菜 私は今は憲法改正に反対しているんです。清水さんはご存じだと思いますけど。
清水 よく知ってます。憲法改正には賛成だけど、今の安倍の改憲案には反対している。たしかに憲法を守らない人に憲法を触らせるのは危険です。秘密保護法は知る権利を阻害するものです。盗聴法は二一条の通信の秘密も犯しますし。共謀罪も国連の人権委員会から指摘されているにもかかわらず押し通した。安保法制のときも、内閣法制局で認めてこなかった集団的自衛権を解釈だけで変えてしまった。もっといえば、憲法五三条の規定で臨時国会を開かなければならないのも、ないがしろにするわけです。憲法破りの常習犯に憲法を触らせるのは、今の憲法がいいか悪いか以前の議論です。
適菜 そのとおりです。安倍の改憲は論外です。改正するならまだしも改悪するなら意味がない。ただ憲法を変えればいいというのは、幼稚な改革幻想、根拠のないオプティミズムです。左翼は憲法を変えないと言っている限り、大きな害はない。現状維持ですから。問題は変えると言っている連中の、憲法観、国家観、歴史観がデタラメなことです。
清水 だから、改憲派も護憲派も、政治的立場やイデオロギーを抜きにして、安倍の下での改憲はダメやというのが、日本人として譲ったらあかんとこやと思います。国民的議論や合意があって、憲法をどうしても変えてほしいという声が上がったなら改憲すればいい。憲法九九条には、国会議員、国務大臣の、憲法尊重義務があります。国民の要望がないのに、政権側が「俺たちの理想の憲法をつくる」と言うのはおかしい。
適菜 状況にあわせて憲法を都合よく解釈し、国の根幹の問題を考えるのを避けてきたツケがまわってきたということです。
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『日本共産党 政権奪取の条件』
著者:適菜 収、清水 忠史
日本共産党とは相いれない部分も多い。私は、共産主義も新自由主義と同様、近代が生み出した病の一環であると考えているからだ。日本共産党が政権を取る日は来るのか?本書で述べるようにいくつかの条件をクリアしない限り、国民の信頼を集めるのは難しいと思う。そこで、私の失礼な質問にも、やさしく、面白く、かつ的確に応えてくれる衆議院議員で日本共産党大阪府委員会副委員長の清水忠史さんとわが国の現状とその打開策について語った。
――――保守主義者・作家 適菜 収
作家・適菜収氏との対談は刺激的であった。保守的な論壇人としてのイメージが強く、共産主義に対して辛辣な意見を包み隠さず発信してきた方だけに、本当に対談が成り立つのだろうか、ともすればお互いの主張のみをぶつけ合うだけのすれ違いの議論に終始してしまうのではないかと身構えたのだが、それは杞憂に終わった。
――――共産主義者・衆議院議員 清水忠史